糖尿病の食事療法は、正しい食習慣により過食を避け、偏食せずに規則正しい食事をすることであり、特別な食事をすることではありません。過度な糖質制限など間違った食事摂取により摂るべき栄養が摂れず、タンパク質の過剰摂取などにより思わぬ合併症を招くことがあります。
まずは日常の生活に必要な量を食べ、余分には食べないようにすることです。食べる量は少なければ少ないほど良いのではなく、多くも少なくもない適正な食事量です。子どもの場合は発育成長に必要な量を食べなければなりません。適正な食事量は年齢·性別·体格·体を動かす程度などによって人それぞれに異なりますから、主治医に決めてもらいましょう。食事量の大まかな目安は以下です。
年齢、肥満度、身体活動量、病態を考慮してエネルギー摂取量が決定されます。
現体重と目標体重に乖離がある場合は、柔軟に対処します。
治療開始時の目安とするエネルギー摂取量の算出方法は
エネルギー摂取量=目標体重×エネルギー係数
※1目標体重は年齢によって異なります。
65歳未満:[身長(m)]2×22
65歳以上:[身長(m)]2×22~25
※2エネルギー係数は活動量によって異なります。
軽い労作(大部分が座位の静的活動) 25~30kcal/kg目標体重
普通の労作(座位中心だが通勤·家事、軽い運動を含む) 30~35kcal/kg目標体重
重い労作(力仕事、活発な運動習慣がある) 35~ kcal/kg目標体重
栄養素の構成成分としては一般的に指示エネルギーの40〜60%を炭水化物から摂取し、さらに食物繊維が豊富な食物を選択します。タンパク質は20%までとして、残りを脂質としますが、25%を超える場合には飽和脂肪酸を減らすなどの脂肪酸組成に注意します。
次に栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラル)の過不足がないように、栄養バランスの良い食事をすることです。いろいろな食品を食べることが大切です。食べてはいけない食品は基本的になく、糖尿病に特に良い食品もありません。食べすぎさえしなければ食べられます。
さらには味付けを薄くし、食塩を減らして(男性7.5g未満、女性6.5g未満)、高血圧を予防します。高血圧を合併している場合には塩分は男女とも6g/日未満まで制限をします。糖尿病腎症の進展によっては高血圧がなくても6g/日未満へ制限することがあります。
また脂身の多い肉などコレステロールや飽和脂肪酸を多く含む食品をひかえて、脂質異常症を予防します。食物繊維を豊富に(1日20g以上)摂取します。これらによってより効果的に合併症の発症を予防できます。
腹八分目にして好き嫌いなく食べるという、当たり前のことを実行することが大切です。まずは現在の食事内容を把握して、修正するべき点を見つけ、そのうえで食事療法を実行した方が負担は少ないでしょう。
糖尿病学会が編集している書籍で「糖尿病食事療法のための食品交換表」があります。これは栄養的に近い食べ物をグループにしてあり、グループ内で食品を交換して食べることによって、適正なエネルギー量の食事・栄養バランスが良い食事をとることができるように工夫されています。是非利用を検討してみてください。
参考
・日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイド2022-2023
・厚生労働省 e-ヘルスネット:糖尿病
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-048.html
・国立国際医療研究センター:糖尿病情報センター
https://dmic.ncgm.go.jp/