橋本病は、バセドウ病とは反対に、甲状腺ホルモンの分泌が低下する病気です。慢性甲状腺炎とも呼ばれます。女性の10人に1人、男性の40人に1人が橋本病だといわれるほど、比較的頻度の高い病気です。
橋本病の原因
橋本病は、免疫の異常によってリンパ球が甲状腺を攻撃してしまい、甲状腺が慢性的に炎症を起こす病気です。必ずしも、甲状腺ホルモンの分泌量が少ないわけではありません。リンパ球の攻撃によって甲状腺が少しずつ壊されていき、作られる甲状腺ホルモンの量が減ると、「甲状腺機能低下症」へ進展することがあります。
橋本病の症状
のどにある甲状腺が腫れて、圧迫感や違和感をおぼえることがありますが、無症状の方もいます。
甲状腺機能低下症に進行した場合は、以下のような症状がでます。
・気力が出ない
・疲れやすい
・体重が増える
・便秘
・声がかすれる
・月経過多(出血量が多い)
こうした症状が長引いているときは、お気軽にご相談ください。
橋本病の検査
橋本病の診断のために、以下のような項目を調べます。バセドウ病で同じ結果になる項目もありますが、さまざまな項目を総合的に判断して橋本病を診断します。
抗TPO抗体 (抗ペルオキシダーゼ抗体) | 甲状腺の細胞を傷つける自己抗体です。バセドウ病では約90%、橋本病ではほぼ100%陽性になります。 |
抗Tg抗体 (抗サイログロブリン抗体) | 甲状腺の細胞内にある「サイログロブリン」というタンパク質に対する自己抗体です。バセドウ病で約60%、橋本病では約80%陽性になります。 |
FT4、FT3、TSH | バセドウ病でも調べる項目です。橋本病の場合は、全体の70〜80%の方が正常範囲に入っていますが、橋本病で病院を受診される方は異常値の出ることが多いです。 |
橋本病の治療
橋本病は、甲状腺の機能が低下しない限り、治療は不要な場合がほとんどです。甲状腺機能は変動するため、定期的に検査していきましょう。
甲状腺機能が低下してきた場合には、甲状腺ホルモン薬「チラーヂン(成分名:レボチロキシン)」を内服します。少量から始めて少しずつ増やしていき、FT4の値を見ながら個々人にあった量に調整します。
副作用として、薬の量が多過ぎた場合には動悸がする、汗をかく、手が震えるといった症状が出るかもしれません。別の医療機関へかかる際には、お薬手帳を持参するか、甲状腺ホルモン薬を飲んでいることを伝えてください。