新緑糖尿病内科クリニック

潜在性甲状腺機能低下症と妊娠:甲状腺レベルの影響とは?

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潜在性甲状腺機能低下症と妊娠:甲状腺レベルの影響とは?

潜在性甲状腺機能低下症と妊娠:甲状腺レベルの影響とは?

2023/10/30

甲状腺ホルモンの異常は不妊原因のひとつですが、まだ一般的に知られておらず、不妊の検査項目にも入っていないことがよくあります。身体の不調があって検査を受け、原因不明の不妊が甲状腺ホルモンの異常によるものであったとわかるケースもあります。
日本人の20人に1人の割合で甲状腺に何らかの異常があるとされており、甲状腺の病気は珍しいものではありません。また、甲状腺の病気は20~30歳代の若い女性に多い傾向があります。ほとんどは身体のちょっとした不調程度の症状ですから見過ごされることもよくあり、注意が必要です。

目次

    潜在性甲状腺機能低下症とは?

    「潜在性甲状腺機能異常」とは、症状や所見には表れない程度の軽い甲状腺ホルモンの過不足状態のことを指します。甲状腺ホルモンは、脳の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)により刺激を受けて甲状腺から分泌されています。血中の遊離甲状腺ホルモン(FT4)は基準範囲内なのに、同時に測定したTSHのみが正常値よりも高い場合を潜在性甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンがやや低い傾向にあり、正常に保つために多くのTSH刺激を必要としている状態)と呼びます。自覚症状はないことがほとんどです。潜在性甲状腺機能低下症では、高コレステロール血症や心機能低下、女性では不妊や流産との関連が指摘されています。潜在性甲状腺機能亢進症では、心房細動や骨折のリスクがあがるとの報告があります。

    妊娠中の甲状腺レベルの重要性

    甲状腺ホルモンは胎盤を通して胎児に移行し、胎児の知能を含めた身体発育に極めて重要な働きをします。母親の甲状腺ホルモンが不足すると胎児の発育および妊娠経過に悪影響(流産・早産など)を及ぼします。甲状腺機能のコントロールは、TSHを指標に行います。TSHは甲状腺ホルモンが不足すると上昇します。米国臨床内分泌学会/米国甲状腺学会、欧州甲状腺学会では妊娠前と妊娠初期のTSH値を2.5μU/ml未満、妊娠中期(14週~)TSH<3.0μU/mlにするよう推奨しています。妊娠希望のある、または妊娠初期の女性で甲状腺自己抗体が陽性の「潜在性甲状腺機能低下症」は、流・早産や妊娠高血圧症候群のリスクが高く、治療によりそのリスクを改善できる可能性が高いので、TSH2.5µU/ml以下を目標に、T4製剤(チラーヂン®S、レボチロキシンNa)の内服を開始します。甲状腺自己抗体が陰性であっても、不妊治療中である場合や流産を繰り返している場合など、治療による効果を期待してT4製剤治療を行うこともあります。

    潜在性甲状腺機能低下症が妊娠に与える影響

    妊娠中に潜在性甲状腺機能低下症がある場合、甲状腺ホルモンの分泌が不十分となるため、胎児の脳や身体の発育に影響を与える可能性があります。さらに、母体も甲状腺機能低下症によるリスクを抱えるため、母体の健康状態にも注意が必要です。妊娠前の検査で潜在性甲状腺機能低下症が発見された場合、母体と胎児の健康のために甲状腺ホルモンの補充治療が推奨されます。また、妊娠中の甲状腺機能低下症の発見にも注意が必要であり、定期的な甲状腺検査が重要となります。内分泌内科の専門家と相談し、適切な治療を受けることが、母体と胎児の健康を守るために必要です。

    検査値が基準値内でも注意が必要な理由

    妊娠前から甲状腺ホルモン薬を内服している方は、妊娠中は甲状腺ホルモンの必要量が増加するため、内服量を25~50%程度増やす必要があります。甲状腺ホルモン薬は非常に安全な薬剤で、妊娠中、授乳中も安全に服用することができます。服用しないことで、甲状腺機能低下症になることは好ましくないので、自己判断での中断はしないようにしてください。

    産後の甲状腺の検査の必要性

    出産後に発症する無痛性甲状腺炎を産後甲状腺炎といい、出産後7~8%程度の頻度で生じるとされます。産後2~3か月での甲状腺機能検査をお勧めしています。甲状腺機能亢進症による頻脈などの症状が強い場合には、授乳中でも内服可能なプロプラノロールなどを投与することがあります。長期的には、25~30%の頻度で、永続性甲状腺機能低下症となり、甲状腺ホルモン薬の内服を要するという報告もあります。橋本病に関係する自己抗体である抗TPO抗体が陽性の方は、特に注意が必要です。

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